ある家族の笑顔 ~南三陸町~ [被災地訪問]
2012年8月14日(火)
南三陸町志津川に立ち寄った時のこと。
港の近くに車を止めて少し辺りを歩いてみた。
この辺りは鉄筋のビル以外は津波に流されて基礎だけになってしまって
いる。
歩いていると、ある民家跡地の前で笑顔でピースをしながら写真を撮って
いる若い娘が目に飛び込んできた。
家族で来ている連中だった。
被災地で被災された方々の気持ちも考えずに記念撮影をする連中がいると
いうことを話には聞いていたが、目の前で見るのは初めてだった。
体中の血液が逆流するような怒りが込み上げてきた。
鬼の形相でこの家族をにらみつけながら通過しようとしたときに母親が
「家族みんなで写真を撮りたいから」
とカメラを差し出してきた。
何かきつい一言でも投げかけて断ってやろうと思った瞬間…
「家族みんなで我が家の前で写真を撮りたいから」
言葉を失ってその場で固まってしまった。
そんな僕をよそに家族はかつての門の前で整列していった。
娘さん、お兄さん、お母さん、お父さん、そしておばあさん。
みんな満面の笑顔だった。
今日まで数えきれないほどの涙を流してきたことだろう。
僕が想像もできない程の困難を乗り越えてきたことだろう。
そんな家族が今僕の目の前で笑顔でこっちを見ている…
カメラのファインダー越しに彼らの笑顔を見ながら溢れてくる涙を
こらえるのに必死だった。
これからも東北に通おう…と改めて心に誓った。
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